デトロイトに本社を構える、"サリフ・インダストリー"は、人体インプラント用の最先端の神経オーグメントや人工装具の設計・開発の最大手。一般向けの商品開発は勿論のこと、国防や軍に関連した製品開発も手がけており、傷ついた軍人の為のオーグメンテーションから、戦場という特殊な状況下で能力を発揮する独自のオーグメンテーション開発なども請け負っている。社員の多くは、オーグメンテーション分野の科学者や研究者だが、専属の医師や看護師なども抱え、本社や自社工場、各種研究開発施設で働く人員は1500名を超える。オーグメント業界最大手であるサリフ・インダストリーは研究規模や研究内容の性質から、一企業でありながら国家に匹敵する権力を掌握しつつある。
社長の"デイヴィッド・サリフ"は言わずもがなオーグメンテーション推進派であり、技術革新によって人間はより進化できると考えている。
おそらく他のどの場所よりも、デトロイトは、過去20年間のアメリカの変化を体現している街である。自動車産業の崩壊、そして2015年の世界的石油危機によって死の街と化したデトロイト。かつてアメリカの産業の中心にあったこの街の誇りは、腐敗と貧困、それと犯罪によって食いつくされてしまった。だが、希望はある。2007年、オーグメンテーションの開発企業であるサリフ・インダストリーがデトロイトに本社を設置。開店休業状態だった自動車工場を最新鋭の製造工場へと改築した。デヴィッド・サリフは、デトロイトが"希望の光"となることを信じて疑わず、資本投下と都市再生によって、国中に手本を示そうとしている。サリフは言う。「人体拡張技術が人類、そしてデトロイトに輝ける未来をもたらすだろう!」
サリフ・インダストリー本社。本社には事務方のオフィスの他、多くの科学者や研究者が詰めるラボが併設されている。セキュリティチーフであるアダムのオフィスもここにある。襲撃から六か月が経過した今、その爪痕を感じさせるものはない。
ラボでは日夜オーグメンテーションに関する研究、開発がおこなわれている。
肉体の機能を補助したり、高めたりするオーグメンテーションから、今では思考や反応を早める神経系のオーグメンテーションまで存在し、人体のあらゆる部位をオーグメンテーションに置き換えることができる。こうした大掛かりな研究、開発にかかる費用の大部分は軍により出資されている。